8.29.2011

ポトスライムの舟/津村記久子



正直どう感想を書いたらいいのかよくわからないのです。
面白かった、面白くなかったという感想はこの本を読んだ後は出てこない。
ただ何処となく行き場を失った感情がぐるぐると巡る。

何が起こるわけでもない。
ただ淡々と告げられる”ナガセ”の日常とその周りの人々。
前の会社を辞めて、働く事が恐怖になってしまい
工場で働くものの、趣味があるわけでもないし、人生楽しい事があるわけでもない。
そんな彼女がふと目にしたもの。世界旅行一周の旅のポスター。
自分の一年分のお給料と同じ値段のその旅行。

なんのために生きているのか。
その質問に対する答えはひとりひとり違うだろう。
大きな目標がなくったって、「夢」なんて大それたものがなくても
毎日生きてゆく日常のなかでほんのすこしのことが希望になる。
生きてく、ってそんなものかもしれない。

「十二月の窓辺」はなんとも鬱々とした物語だ。
会社で一種のいじめのようなものを受けながら
疎外感を感じて生きている”ツガワ”のお話。
正直にいうと、経験がない私にはファンタジーのような感覚で
読んでしまうのだけれども、あまりの微妙な詳細さ加減に
その光景がありありと浮かんで、ますますなんだか鬱々となってしまう。

こちらの作品も「面白かった」「面白くなかった」という感想はでない。
それでも何かしらの”痕”を私の心の中に残した。

他の作品はどうなんだろうか…、
思わずちょっとこの作家さんの本を読んでみたくなった。

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